4. ギリシャ神話の神々、妖精、妖怪、英雄の名鑑 -タ・テ・ト | 小澤 克彦 岐阜大学・名誉教授

ギリシャ神話の神々、妖精、妖怪、英雄の名鑑
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ダイダロス(迷宮・飛行翼の建造の名工)

クレタ島の「迷宮の神話」で知られる。クレタ島の王ミノスが海の神ポセイドンの呪いを受けて、その妻が牛と交わって生んだ怪物「ミノタウロス」を閉じこめるために建造した「迷宮」の建造者。後に英雄テセウスのミノタウロス退治の事件にかかわり自身が迷宮に閉じこめられるが、翼を作成して息子イカロスと共に空を飛んで脱出した(テセウス伝説参照)。

ダナエ(ゼウスの被害者、英雄の母)
「ダナエの物語」は、その子となる「ゴルゴン退治のペルセウス」の物語と共に有名。ダナエから生まれる子によって命を落とすことになるとの予言をうけた父のアルゴス王は娘ダナエを幽閉してしまうが、ゼウスが「黄金の雨」となって屋根の隙間から彼女に降り注ぎ犯してしまう。その生まれた子どもが英雄ペルセウスとなる。二人はその後幾多の苦難にあうが、ペルセウスはそれを克服し、ダナエも息子ペルセウスに救われようやく平安を得る(「ペルセウス伝説」の章参照)。

タナトス(死神)
「死」を意味するタナトスの擬人神。ホメロスの叙事詩やヘラクレス伝説で人格化された神として登場する(「闇にうごめく神々」の章参照)。

ダフネ(妖精、アポロンの恋人)
彼女は河の神の娘で、アポロンに恋されたがそれを拒絶して逃げ、アポロンに捕まりそうになったところで父である河の神に願って一本の木に身を変えてもらったという。それが「月桂樹」で、以来アポロンはそれを自分の聖木としたという。アポロンの祭典での勝利者に与えられる冠が「月桂冠」となるのはこのため(「神々の恋」の章参照)。

タユゲテ(昴の一人、ゼウスの被害者)
昴の星の姉妹の三人目。彼女はゼウスに犯されて「ラケダイモン」を生み、これを恥じて山中に身を隠し、以来その山は彼女の名前で呼ばれるようになった。この山こそスパルタの西に険しくそびえる有名な山脈「タユゲトス山」である。一方、この子どもの名前である「ラケダイモン」とはスパルタ地方の名となり、それはこのラケダイモンがこの地の祖となっていったことに由来する。

タルタロス(宇宙開闢の神)
宇宙が開闢した時の「四柱」の神の一人だが、その働きは今ひとつはっきりしない。ヘシオドスは「大地の奥底にある」としか語っていないが、一般に「底なしの地獄」とされて、永遠の罰を受ける者たちがおとされるところとされた。

タンタロス(罪悪的人物)
底なしの地獄タルタロスで苦しむシシュポスと並んで、やはりそこで永遠の苦しみに喘いでいる者として知られる。その苦しみとは、池の中に浸けられ、のどが渇いて飲もうとすると水は引き、また上にはたわわに果物が垂れ下がっているのだが、空腹でそれを取ろうとするとその枝は上に舞い上がってしまうという、永遠の乾きと空腹にさいなまれるというもの。その原因は神々の饗宴に招かれたのに、決して口外してはならない禁を犯したとか、自分の子を殺して料理して神々に供したとかいわれる。

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テイア(巨人・ティタン神族の女神)
ウラノスとガイアの娘。ヒュペリオンの妻として「太陽神ヘリオス」「月の女神セレネ」「曙の女神エオス」の母となる。

デイアネイラ(ヘラクレスの悲運の妻)
エウリピデスの悲劇『トラキスの女たち』の主人公。ヘラクレスの妻として旅の途中ケンタウロスのネッソスに襲われ、ヘラクレスはこれをヒュドラの猛毒を塗った矢で射殺したが、その際ネッソスは彼女に媚薬と偽って自分の血を持っていかせ、後にヘラクレスが他の女性に愛を移した時、その愛を取り戻そうと、媚薬と信じていたこの「毒の血」を用いてヘラクレスを死に至らしめ、絶望と悲しみのうちに首をつって死んだ。

ディオスクロイ(双子神)
カストルとポリュデイケスの双子神。カストルの項を参照。

ディオニュソス(神・最重要神の一人)
由来の複雑な神であるが、オリュンポス神族の中にあって「ぶどう酒の神」「演劇の神」として知られる。一方で「宗教的狂乱」の神でもあり、その祭りはローマ時代には禁止されたほどのものがあった。そのありようはエウリピデスの悲劇『バッカイ』で良く知られている。彼にまつわる神話は波乱に富む(「オリュンポスの神々の物語」の章参照)。

ディオネ(ゼウスの妻の一人)
本来は「大地母神」であったようだが、ドドネのゼウス神域ではゼウスの妻とされている。ホメロスの叙事詩『イリアス』ではゼウスとの間に「アフロディテ」を生んだことになっている。

ディオメデス(トロイ攻めの英雄)
テュリンスの領主で、トロイ戦争の英雄。アキレウスに次ぐ勇士として彼の不在中獅子奮迅の活躍をしている。人間が神々を傷つけてしまうという(むろん他の神々、つまり女神アテネの差し金だが)すさまじいことは彼によって行われ、女神アフロディテはともかく、「戦争の神アレス」まで手ひどい眼に合わせて、そのため神アレスは悲鳴を上げて天に逃げ帰っている(「トロイ戦争伝説の各章を参照」。

ディケ(正義の女神)
「正義」の擬人神。アストライアと同じとされる。同項を参照。

ティタン神族(巨人族、クロノスの一族)・・・初代の神ウラノスが、自分の子「ヘカトンケイレスの一族」を嫌って妻ガイアの腹中にもどしたことから、妻ガイアは復讐を計画する。そして、それに手を貸した息子「クロノス」が二代目の神となる。このクロノスの兄弟姉妹は六人の男性神と六人の女神とからなる。六人の男性神は「クロノス」の他「大洋の神オケアノス」「天空神ヒュペリオン」「イアペトス」(以上は同項参照)「コイオス」「クレイオス」となる。女神は「タイア」「レア」「掟のテミス」「記憶のムネモシュネ」「ポイベ」「海のテテュス」となる。

ティトノス(曙の女神エオスの恋人)
月の女神セレネが恋したエンデュミオンの話と似ているが(同項参照)、月の女神セレネの方はエンデュミオンに「不老不死」を授けたのに、ティトノスの場合、曙のエオスは「不老」を願うのを忘れたため、彼は「不死」ではあったがだんだん老いていって、結局は老残の身を横たえるだけとなってしまい、ついに「セミ」になってしまったという。

テイレシアス(予言者・英雄)
テバイの予言者であり、盲目の予言者として有名。もっとも知られるのが、父を殺し母と子をなしたオイディプスにその事実と素性を明らかにしたものだが、その他「テバイ戦争」にかかわっての数々の予言、さらにペンテウス(同項参照)に神ディオニュソスを受け入れることの進言、死後に死霊の神託所を訪ねてきたオデュッセウスへの予言など、時代を超えた予言者となっている。彼自身についての伝承としては、盲目となった理由として幾つかの説が語られている。一番知られているのが、男と女とでどちらが強く快感を得るかということでゼウスとヘラが争った時、「1対9の割合で女」と答えてヘラによって盲目とされたが、ゼウスによって予言術を授けられた、というもの。

デウカリオン(人間の創造神)
神プロメテウスの子で、パンドラの娘ピュラを妻としていた。ゼウスが人間を滅ぼそうと洪水を起こした時、方舟を造って助かり、ゼウスの計らいで石から人間を再生させたという、いわゆる「ノアの方舟」と同じタイプの神話の主人公(「プロメテウスの神話」の章参照)。

テセウス(アテナイの英雄)
アテナイ地方の英雄であるが、彼はペロポネソスを活動舞台とする英雄ヘラクレスに対抗するような格好で、アテナイ地方を根拠とする英雄として伝承された。「幼少期の伝承」「野盗退治」「マラトンの牡牛退治」「クレタ島のミノタウロス退治」「王位についての物語り」など多彩となるが、現代にまで有名なのは「ミノタウロス退治」くらいとなる。これは、クレタ島の迷宮に封じ込まれていた怪物ミノタウロスの餌食としてアテネから7人の少年と少女を差し出さなければならなかったことにテセウスが乗り出してクレタ島にわたり、アリアドネの助けを得て迷宮に入ってミノタウロスを退治し、帰途ナクソス島でアリアドネを神ディオニュソスに奪われ、傷心のままアテネに戻ったため黒い帆を白い帆にかえることを忘れ、それを見た父王アイゲウスが海に投身してしまったというもの。(テセウス伝説参照)。

テティス(海の女神、英雄アキレウスの母)
英雄アキレウスの母として知られる彼女は、「海の老人」と呼ばれる神ネレウスの50人の娘の一人で、本来なら妖精程度のはずなのだが彼女だけは特別扱いである。有名なのはゼウスがテティスに迫ったが、彼女から生まれる子は父を凌駕するとの秘密を知り、彼女をあきらめて英雄ペレウスの妻としたというもの。アキレウスを生んだ時、それを不死にしようと冥界を流れる河ステュクスに浸けたが(アポロドロスでは火にあぶるとなる)その時くるぶしをつかんでいたため足首に水が染み渡らず、アキレウスはくるぶしの部分が急所になってしまったという(「トロイ戦争の発端」の章を参照)。

テテュス(海の女神、巨人・ティタン神族の女神)
大洋オケアノスの妻となり、あらゆる河川の母となる。

テミス(掟の女神、巨人・ティタン神族の女神)
ゼウスによって「季節のホライ」「運命のモイライ」「アストライア(正義の女神ディケの別名)」「エイレネ(平和の女神)」等々の母となる。後アポロンに予言の術を授けたとも言われる。ホメロスの叙事詩では神々の集会を招集し取り仕切る重要な女神とされている。オリュンポス神族の時代となってもその地位を保てた数少ない巨人(ティタン)神族の一人。

デメテル(オリュンポス12神の女神)
「穀物の女神」であり、また穀物の持つ性格としての「一度土に埋められ再生する」という性格から、「再生」を願う人類の願いによって「密儀宗教」を生み出した。これはアテナイ地方で興隆し「エレウシスの密儀」といって重要な文化現象となった。娘ペルセポネ(同項参照)と冥界の神ハデスとかかわる物語で知られる(「オリュンポスの神々の物語」の章参照)。

テュケ(偶運の女神)
盛期ギリシャ時代には未だ「擬人神」で人格神の性格は薄い。ヘレニズム以降人格化がなされていき、崇拝の対象となっていくが神話はない。

テュデウス(テバイ攻めの英雄)
テバイ攻めの七将の一人で剛勇の戦士。彼が傷ついた時。女神アテネは彼を癒して不死にしようと思った時、その意を察したアムピアラオスが敵の首をテュデウスに与えてその脳を食わせたためアテネは嫌悪してその計画をやめたという。トロイの英雄テュデウスの父としても知られる(「テバイ戦争伝説」の章参照。

テュポン(怪物)
ゼウスたちが原初の巨人「ギガンテスたち」を退治したとき、大地の女神ガイアはそれを意に沿わぬこととして怒り、「無間のタルタロス」によって生み出した怪物とされる。ゼウスたちはこれと戦うがさしものゼウスも敗れ、その手足の健を切り取られてしまい、洞窟に押し込まれてしまったという。神ヘルメスと牧神パンがその健を奪い返してゼウスに戻し、こうして再びゼウスは戦い、他方テュポンはモイラにだまされ無常の果実を食ってしまい、ついに退治されたという。この英語読みが「タイフーン」となり、日本での「台風」の語源となったとされる。

テュロ
彼女は人間の娘であったが、この地方を流れるエニペウス川の好きな少女で日ごとに川辺に出かけていた。それをポセイドンが目にして恋し、そのエニペウス川の神に身を変えてテュロに近づき、渦巻く河口のところで彼女を抱いて交わったという、この子どもたちというのは、一人はアルゴー船伝説の登場人物である「イオルコスの悪王ペリアス」であり、一人はペリアスに追われてピュロスに逃れてそこの王となり、トロイ戦争での老勇ネストルの父となる「ネレウス」であった。

テュンダレオス(王)
彼の出征中に、神ゼウスが彼の姿に身を変えて妻レダと床を共にし、翌朝帰ってきた彼も妻と床を共にし、こうして「双子神ポリュデイケスとカストル」「クリュタイメストラとヘレネ」を生むことになったという伝承が一番有名。娘クリュタイメストラによるアガメムノンの暗殺、その子オレステスによる母クリュタイメストラの殺害という一連の事件にも関与してくる。

テラモン(ヘラクレス伝説での英雄)
ヘラクレスのトロイ攻めの時に同伴する。彼が一番のりをしたことで、何でも一番でなければ気がすまないヘラクレスが怒った時、ヘラクレスのために祭壇を作って難を逃れ、捕らえられたトロイの王女ヘシオネを与えられたという。別伝でカリュドンの猪狩り、アルゴー船伝説の乗組員、トロイ攻めの英雄アイアスの父といった伝承を持つ。

テルシテス(トロイ戦争での道化的役割の兵士)
ホメロスの『イリアス』での異色の人物。卑しく醜い男として描かれ、一兵卒に過ぎないのにみんなの前で総大将アガメムノンをあざけってオデュッセウスに殴られたり、アキレウスがアマゾンの女王ペンテシレイアを討ってしまったのを嘆いているとあざけって殺された。

テレポス(トロイ戦争でのトロイ方の王)
第一回のトロイ攻めの時、ギリシャ軍はトロイが分からずミュシアに攻め入った。そのミュシアの王で、アキレウスに傷つけられた。テレポスの傷は傷つけた者しか直せないということで、テレポスは乞食に身を変えてアキレウスの元にきて、トロイへの進軍の道を教える条件で傷を直してもらった。エウリピデスの悲劇にこのテーマがあり、アリストパネスの喜劇などに引き合いにだされている。

テレマコス(オデュッセウスの息子)
ホメロスの『オデュッセイア』の主要登場人物。父オデュッセウスを求めてかつての父の戦友の元を訪ね、帰還した父とともに館を荒らす者どもを退治する(「オデュッセウスの物語)の章を参照。

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トリトン(海の精)
ポセイドンとその妻アムピトリテの息子で、「半人半魚」の姿で父ポセイドンに従って海馬にまたがって海をわたっているとされ、ホラ貝を手にそれを吹き鳴らしている姿で描かれる。

トリプトレモス(エレウシスの秘儀の英雄)
老婆に身を変えてさまよう穀物の女神デメテルがエレウシスにあって歓待された時、女神はその正体を表して王子トリプトレモスに麦の栽培法を授けたという。彼はアテナイでデメテルの祭り「テスモポリア祭」を創始したとされ、エレウシスの秘儀の主要人物となる。

トロポニオス(予言の英雄)
デルポイ近くのリヴァディアに彼の予言所(洞窟)があり、ここは古代にあって有名な神託所であった。この神託所は多くの人々が神託を乞いにやってきた一方で、ここは冥界とつながっているとして恐れられたとも言う。しかし、そのトロポニオスの伝承に「予言者」となったいきさつの話がない。むしろ彼はその兄弟アガメデス共々、名工として数々の神殿を建てたとの伝承が主体となっている。

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