4. ギリシャ神話の神々、妖精、妖怪、英雄の名鑑 -サ・シ・ス・セ | 小澤 克彦 岐阜大学・名誉教授

ギリシャ神話の神々、妖精、妖怪、英雄の名鑑
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ザグレウス(神ディオニュソスの別名)
ギリシャ時代に存在していた一種の宗教教団「オルペウス教団」での主神で、神ディオニュソスと同一視される。そのオルペウス教団の伝承では、ザグレウスはゼウスの子で世界の支配が約束されていたがその妻ヘラに憎まれ、そそのかされた巨人族に襲われて食われてしまったという。怒ったゼウスは巨人たちを稲妻で焼き殺し、その灰から人間が生まれたという。こうして人間は「愚かで野蛮な巨人の血」と「ザグレウスの神性」を併せ持っているとされた。他方ザグレウスの心臓は女神アテネによって救い出されて、ゼウスはそれを飲み下して、セメレによって再び「神ディオニユソス」として再生させたという(「オリュンポスの神々の物語」の章参照)。

サテュロス(山野の精)
神ディオニュソスの従者として知られる。上半身は人間で下半身が山羊の姿で描かれ、陽気で酒を好み女好きとされ、大きな男根を持った姿で描かれることが多い。シレノスやパンとの身体的類似性を持つ。

サルペドン(クレタの英雄)
有名なところでは二人のサルペドンがおり、一人はクレタ伝説での、神ゼウスがエウロペから生んだ「ミノス」と「ラダマンテュス」と並ぶ三人目の兄弟となる。伝説ではミノスと争うことになってクレタを去り、小アジア(現在のトルコ地方)にわたってリュキアの王となる。

サルペドン(トロイ方の英雄)
もう一人は「トロイ戦争」の勇士の一人で、リュキアの王としてトロイの援軍として駆けつけ、ギリシャの陣営を最初に突き破るなどの奮戦をして倒れた。伝承では舞台の時代が合わないが、この二人は共に「リュキア」に関係しており、おそらくリュキアの伝説的建設者ないし王の伝承が二つに分かれたものと思われる。

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シシュポス(悲劇的人物)
地獄で、坂道を重い岩を押し上げては再び転げ落ちた岩を押し上げるという苦難を永遠に科せられた者として有名となっている。こうなった原因として、神ゼウスが少女アイギナを浚っていったのを知って、娘アイギナを訪ねて旅する父親にその秘密を教えてやったためゼウスの怒りを買ったという全く理不尽な伝説がある。あるいは彼が「死神」を騙したり「冥界の王ハデス」を騙したため、という伝承もある。時にシシュポスが狡猾な男として紹介される時はこの伝承による。

シュビレ(神託の巫女)
本来は個人的な名前であったが、後代になってアポロンをはじめ神のお告げを告げる巫女全般の名前とされ、各地にシュビレの名前を持つ巫女が存在したとされる。本来の個人としてのシュビレについてもさまざまに言われているが、いずれにせよ予言の術に優れた娘としての伝承を持ち、そのためこの固有名詞が普通名詞にされていったとされる。

シュリンクス(妖精)
「牧神パン」の物語で良く知られた妖精。物語はアポロンとダフネの物語と似ていて、パンが美しい妖精のシュリンクスに恋をして追いかけ、シュリンクスは逃げて川辺に追いつめられた時、願って自分の姿を「葦」に変えてもらった。パンは、葦となったシュリンクスの茎を切り取りそれを吹いたところ妙なる音楽を響かせ、以来パンはそれに恋しい少女シュリンクスの名前を与え常に身に携えていたという。

シレノス(山野の精)
同じ山野の精である「半羊半人のサテュロス」と紛らわしいが、サテュロスが比較的若く描かれているのに対してシレノスは老人として描かれ、その姿も下半身が「山羊」より「馬」として描かれることも多い。顔や姿は醜いが、知恵者として聞こえ高く、そのためミダス王は彼を酔わせて捕まえ「人間にとっての幸せ」を無理に聞き出して、「人間にとっての最大の幸せとは生まれなかったこと、生まれてしまった以上は一刻も早く死ぬこと」といういわゆる「シレノスの知恵」を聞き出してしまった。彼もディオニユソスの従者とされ、この場面ではサテュロスと同じような様相を示している。

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スキュレ、ないしカキュラ(妖怪)
ホメロスの『オデュッセイア』に登場する妖怪として知られる。彼女は、もとは美しい妖精の少女であったのに、彼女に横恋慕した海神「グラウコス」によって身をかえられ、胸から上は元のままなのに脇腹から六っつの犬の頭とそして十二本の足が生えている凄まじい「妖怪」にされてしまう。そして海に面した絶壁の中に住まい、下の海を行く船から一度に六人の水夫をかっさらって餌食にした。彼女の行く末については「退治された」とか「岩に変身した」とか「殺されたけれど魔法で再びもとの姿に戻った」とかの物語がある(「妖精」の章参照)。

ステュクス(冥界を流れる河の女神)
「大洋オケアノス」の娘であり、ある時、父オケアノスが自分の代わりにこのステュクスをゼウスたちオリュンピア神族の援軍として差し向けたという。ゼウスはこれを喜び、以降「神々の誓約」は彼女「ステュクス」の名の下に行われるように取り決めたという。トロイの英雄アキレウスが不死にされるべくこのステュクス河につけられたが、かかとの部分だけ水がかからずそこがアキレウスの急所になったという話はよくしられている。

スフィンクス(妖怪)
スフィンクスはおそらくエジプト由来かと思われるが、ギリシャで独特の姿をとっている妖怪。胸から上は美しい女性の顔立ちで、胴体から下はライオンとなる。エキドナの子。戦いでの死のシンボルや子供さらいなどの伝承もあるが、有名なのはオイディプス伝説での「謎」をかけて解けない者を食らうというもの。その謎は「身体・声は一つで、朝は四つ足、昼は二本足、夕べには三本足となるものは何か」というもので、答えは人間となる。オイディプスによって解かれ、身を投げて死んだといわれる。しかし、一般には「魔よけ」として盾や墓につけられ、「破魔の妖怪」といった性格も持っていた。

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セイレン(妖怪)
上半身は女性で下半身は鳥という妖怪。アルゴー船伝説、オイディプス伝説に登場し、美しい歌声で海をいく者を誘惑して死に至らしめたという。アルゴー船の場合は音楽の英雄オルペウスによって破れ、オイディプスの場合は船のマストに自分の身を縛らせていたおかげで海に飛び込まずにすんだ。彼女たちは複数で、もともとは冥界の女王となるペルセポネに従っていた乙女たちで、そのためか死者を冥界に送る役目を持つとされて墓石にしばしば描かれている。

ゼウス(オリュンポス12神の主神)
オリュンポス神族の「主神」。「天」を所轄し、したがって「雨・雷」などを管轄。また「王者」として「領主」の守りでもあり、その領主に属する「支配力・権力・正義(ただしこれは支配者の正義)、知力」などを司る。また「客人の守り手」でもある。また古代ギリシャ人が大事にした「競技会」のもっとも重要な祭典四つのうち二つまでもがゼウスに捧げられたもので、その中でも最大の祭りが「オリンピック」となる(「オリュンポスの神々の物語」の章参照)。

ゼテスとカライス(アルゴー船伝説の英雄)
北風の神ボレアスの子どもたちで、「アルゴー船伝説」での怪鳥ハルプュイアを退治した。彼らは足に翼を持って疾風のようにとぶことができて、同じく疾風のように空を飛んで逃げるハルプュイアを追いかけ退治した。

ゼプュロス(西風の神)
風の神々もイリスやニケと同じく父親を「原初の神、海原のポントス」の家系にあり、父親はアストライオス(文字通りには「星の男」となる)といい、母親が「曙の女神エオス」。「西風ゼフュロス」は「春を呼ぶ風」とされていて、ボッティチュッリの「春」「ヴィーナスの誕生」に描かれて有名。

セメレ(ゼウスの愛人)
彼女は数少ない「合意」の上でのゼウスの愛人。しかしそれを嫉妬したヘラに騙され、ゼウスに本来の姿で来てくれるように頼んでしまい、ゼウスは「雷と稲妻」とともにやって来て、そのためセメレは死んでしまう。しかしすでに孕まれていた子どもは助けられ、それが後の「神ディオニュソス」となる。ディオニュソスは、その遍歴の途上で冥界へと赴き母セメレを救出して天に昇り母を「神族の一員」にしていく(「神々の恋」の章参照)。

セレネ(月の女神)
人間の青年に恋し、彼を不老不死にして永遠に眠らせ、夜ごと彼のもとを訪れているというエンデュミオンの神話で知られる。ヘリオスの妹として「二頭立ての馬車」を御して夜を駆ける女神(「クロノスの一族」の章、「天空の神々」の節参照。「神々の恋」の章参照)。

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