4. ギリシャ神話の神々、妖精、妖怪、英雄の名鑑 - カ・キ・ク・ケ・コ | 小澤 克彦 岐阜大学・名誉教授

ギリシャ神話の神々、妖精、妖怪、英雄の名鑑
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ガイア、ないしゲー(宇宙開闢の神)
大地の神。宇宙創生の際に、最初に生まれる四柱の神々の一人。「大地そのものの神格化」されたものとして、「物質的・材料的な原理」となる。したがって、「自然を表す神々」は大半がここから生まれてくることになる。神話的に「夫」とされる初代の神ウラノスは単独の原理的神ではなく、このガイアから分かれ出た半身とされる。

カオス(宇宙開闢の神)
開き口、混沌を意味する神。宇宙創生の際の四柱の神々の一人で、文字通り「最初に生まれた」と神話作家ヘシオドスは形容している。意味としては、形無く、色なく、何とも形容することもできない「原初」のものが「形」へと動き始めた際に、形として現れる「始めの開き」といったイメージとなる。未だ特定の形をとるに至らないが「形への原理」が見られるところから「混沌」とも訳されるようになった。

カシオペア(英雄の妻)
星座「カシオペア座」でなじみの名前だが、ゴルゴンのメドゥサ退治のペルセウス伝説の登場人物で、エチオピアにあって海の怪物に人身御供にされるところをペルセウスに助けられその妻となったアンドロメダの母となる。もともと、アンドロメダが犠牲にされそうになったのは、この母であるカシオペアの不敬にあった。

カストルとポリュデウケス(アルゴー船の英雄、後に神)
アルゴー船伝説の主要登場人物で、後に「双子神(ディオスクロイ)」となる。人間時代は、カストルは乗馬の名手でポリュデウケスはボクシングの名手とされ、さらにアルゴー船の操舵手としても活躍する。姉妹に絶世の美女「ヘレネ」とアガメムノンの妻となるクリュタイメストラがいる。

カッサンドラ(トロイの悲劇の王女)
アイスキュロスの『アガメムノン』など、トロイ戦争伝説の登場人物。トロイの王女で、神アポロンより予言の術を授けられたが、アポロンを拒絶したことからその予言は誰にも信用されないという報いを受ける。トロイ戦争にあっても予言を繰り返し、それはことごとく当たるのに誰もそれを信用しないという中でトロイは滅び、さらにギリシャの総大将アガメムノンによってミケーネに連れて行かれて、そこでアガメムノンと自分の死を見るが、その予言も虚しく殺されていく。

カドモス(テバイ建国の英雄)
テバイ建国の王。エウロペの伝説の後日談の主人公。フェニキア地方の王女エウロペの兄弟で、妹エウロペが浚われたということでその探索に各地を彷徨い、テバイまで来て、神託によりこの地にとどまり「テバイ」を建国したという(「テバイ伝承」の章参照)。

ガニュメデス(トロイの美少年)
トロイの美少年で、ゼウスの眼に止まって天に浚われ、神々の酒席にあって神々に神酒ネクタールを酌して回っているという。

カライスとゼテス(アルゴー船の英雄)
アルゴー船伝説の登場人物で「北風神ボレアス」の息子たち。アルゴー船伝説では「妖怪鳥ハルプュイア」を退治して予言者ピルウスを助ける。

ガラテイア(妖精)
「海の妖精」の一人で、その名前は海の白波のしぶきが「乳(ガラ)」のしぶきに見立てられた時の名前といえる。一つ目の巨人キュクロプスのポリュペモスが彼女に恋したが、彼女はアキスという恋人をもっていた。そのガラテイアとアキスが逢い引きしているところをポリュペモスは発見し、怒りのあまり岩を投げつけてアキスを殺してしまった(妖精の章を参照)。

カリス(優美の女神)
複数形で「カリテス」というが「優美の女神たち」となる。一般に三人姉妹とされ「タレイア」「エウプロシユネ」「アグライア」と呼ばれる。肉体的な美しさだけではなく精神的な意味でも「優美」を表し、従って神話に登場場面は多い。ギリシャ彫刻に三人一組となっている若い女性群像がたくさんあるが、それはほとんど彼女たちを意味する。

カリスト(妖精、ゼウスの被害者、大熊座)
彼女は「純潔の女神アルテミス」に忠誠を誓って彼女に付き従っていた森の妖精だったが、ある時彼女が一人でいるところに神ゼウスがアルテミスに変装して近寄り、安心していた彼女に襲いかかって犯してしまった。その後彼女は「熊」に身を変えられ、いろいろあって後に天に上げられ「大熊座」になっていった。一方彼女が孕んでしまったゼウスの子は「アルカス」といい「アルカディア王家」の祖となっていく(「妖精」の章、「星のギリシャ神話」の章参照)。

カリュプソ(海の妖精)
ホメロスの『オデュッセイア』に登場する下級の女神とも妖精ともつかない女性で、「天球を担ぐ神アトラスの娘」とされている。生まれからは「妖精」と言うべきなのだが、彼女は自分の島に召し使いの妖精まで持っていて、その力は女神並のものとして扱われている。彼女は漂流していたオデュッセウスを救助して共に暮らすようになる。自分と共にここに暮らす限り不老不死で何の憂いもないというのに、望郷の念がつのったオデュッセウスを再び海へと帰してやる。

カリュブデス(妖怪)
『アルゴナウティカ(アルゴー船伝説)』並びにホメロスの『オデュッセイア』に登場する海の妖怪。一日に三度海を飲み干し三度はき出すという。オデュッセウスは船が飲み込まれた時、上の岩に生えていたイチジクの枝に捕まり、船がはき出されてきた時、そのマストに飛び乗って難を免れる。

カルカス(トロイ攻めの英雄・予言者)
ホメロスの『イリアス』での登場人物。優れた予言者として、数々の予言でギリシャ軍を助けていく。

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ギガス(巨人族)
複数形で「ギガンテス」。英語の「ジャイアンツ」の語源。「巨人族」であるが、巨人族は他にも「ティタンの一族」などもいる。創世の神ウラノスが男根を切り落とされた時、その血から「復讐の女神たちエリュニオス」共々生まれてきたといわれ、凶暴な巨人族。後代になると上半身はぼうぼうたる髪の毛とひげを持ち、下半身は大蛇の姿で描かれている(シケリアのピアッツア・アルメリーナの壁画など)。

キマイラ(怪獣)
獅子の頭、山羊の胴、蛇の尾を餅、口からは火炎を吹く怪獣。英雄のベレロポンに退治される。

キュクノス(夜盗)
同名異人が複数いる。たぶん一番有名なのが「ヘラクレス伝説」に出てくる「夜盗のキュクノス」で、アポロンの聖地デルポイ近辺にあり、デルポイを訪れるものたちからアポロンへの供物を奪っていた。ヘラクレスはアポロンに依頼されてその退治に乗り出す。一方、このキュクノスは「殺戮の神アレス」の子であったため、ヘラクレスは二人と戦いキュクノスを殺してアレスを傷つけたという。他に同名の物が四人ほどいるがあまり有名ではない。

キュクロプス(一つ目の巨人族)
文字通りには「丸い目の者」となる。神話作家ヘシオドスの叙述では、原初の神、天のウラノスの生んだ種族の一つで、工芸の術に優れ、ゼウスたちがクロノスの一族と戦いになったとき、ゼウスには稲妻、ポセイドンには三つ叉の矛、ハデスに隠れ帽子を贈った。また、ティリンスなどにある巨大な石積みの城塞を「この巨人族の手になる」との伝承から「キュクロプス式の城塞」と呼んでいる。

キュパリッソス(木となった美少年)
アポロンに愛された美少年であったが、彼は鹿を愛していたのにこれを誤って死なせてしまい、悲しみのあまり自分も死んで一本の木になってしまったという。アポロンはこれを哀れんで彼を「悲しみの木」とし、こうして彼は墓場の傍らに常に立つ糸杉(キュパリッソス・ないしサイプレス)の所以となった。

キュベレ(大地母神)
小アジア(現在のトルコ地方)の原初の「大地母神」で、豊穣、山野、予言、治癒、戦争など多方面での支配力を持つ女神として崇拝され、ギリシャ・ローマ世界に伝わり広く崇拝された。

キュレネ(アポロンの恋人)
彼女は山野の妖精であったが、家畜を襲うライオンと素手で戦いこれを倒してしまうほどの剛の者であった。これを見た神アポロンは彼女に恋し、彼女をアフリカに運んでそこで交わったとされる。その地が「キュレネ」と呼ばれるアフリカ地方のギリシャ都市の名前となる。

キルケ(魔女)
ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』に登場する魔女。オデュッセウスの一行がこの島にたどり着いたとき、キルケは部下をみんな「豚」に変えてしまう。オデュッセウスはヘルメス神にもらっていた薬草のおかげでこの難を逃れ、逆にキルケに挑みかかり、部下を元に戻させおまけに一年ほどこのキルケと同棲してしまう。

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グラウコス(海の神、同名異人多数)
このグラウコスも同名異人が多い。おそらく一番有名なのが「海神グラウコス」で、ポセイドンの子とされ、薬草のおかげで不死となって海に入り「海神」となった。予言力を持っていたため漁師たちの崇拝の対象となった。
その他としては、キマイラ退治の「ベレロポン」伝説に出てくる「ベレロポンの父」、同じく「ベレロポンの子」などがいる。

クリュセイス(トロイ戦争での犠牲者)
トロイ戦争時の、トロイのアポロンの神官の娘で、ギリシャ方に捕虜にされアガメムノンが手に入れる。アポロンの神官の願いによってアポロンは疫病の矢をギリシャ方に注ぎ、アガメムノンはその返還を余儀なくされたが、代わりにアキレウスの得た女ブリセイスを要求したことからアキレウスの怒りと退陣とを引き起こした。

クリュタイメストラ(ミケーネの悲劇・修羅の女性)
アイスキュロス『アガメムノン』『供養する女たち』『慈しみの女神たち』の、いわゆる「オレステス三部作」の主人公。また、ソポクレスやエウリピデスの『エレクトラ』の主要登場人物であり、エウリピデスの『イピゲニア』でも主要登場人物。アガメムノンの妻であったが、トロイ出征に際して自分と娘イピゲニアを騙してイピゲニアを犠牲にしてしまった夫を恨み、トロイからの帰還を待って、一人復讐の刃を向けていくという壮絶な修羅の女性となる。

クリュティエ(ヘリオトロープという花の由来となる妖精)
オケアノスの娘で、太陽神ヘリオスに愛されたが、ヘリオスは彼女を捨ててレウコトエを愛人にした。彼女は悲しみのあまり死んでしまったが、死んだ後に花となってヘリオスを見つめ続けているという。ヘリオトロープ(太陽、つまりヘリオスに向いて咲く花)と呼ばれる薄紫の草花の所以の話となる。

クレウサ
エウリピデスの悲劇で知られる女性。神アポロンに犯されて「イオン」を孕むことになり、それが発覚するのを恐れて子を捨てるが、神ヘルメスがその子をアポロンの聖地デルポイに運んで女祭司に育てさせ、長じて波乱の末に母と再会するという物語となる。神話でのイオンは「イオニア人の祖」ということになり、ギリシャ人(ヘレネス)の祖となる「ヘレン」の子である「クストス」とクレウサの子ということになっている。エウリピデスはそれを「本当はアポロン」として物語を創作したと言える。

クレオン(同名異人多数)
同名異人が多い。もっとも有名なのは「オイディプス伝説」に登場するクレオンで、オイディプスの母であり妻であったイオカステの兄弟。『オイディプス王』においては王の誠実な補佐役だったが、『アンティゴネ』では傲慢な暴君として描かれてくる。
その他には「メデイア伝説」でのコリントスの王がやはりクレオンで、メデイアを追放して自分の娘グラウケとメデイアの夫イアソンを結婚させようとし、メデイアに復讐されてしまう。

クロノス(巨人・ティタン神族の主神)
初代の神である天神ウラノスと大地ガイアの子。大地創世のはじめ、地上の創世を担っていた神「天神ウラノス」がその妻「大地ガイア」の怒りを買って、策略にかかってその子「クロノス」に男根を切り取られてしまう。こうしてクロノスはウラノスに代わって二代目の神となる。しかし、このクロノスは「レア」を妻としてゼウス達を生むことになるが、父であり自分が駆逐した「天ウラノス」の呪いを恐れ、その子どもを飲み込んでしまうということからレアの怒りを買って、やがて復活したゼウスたちに戦いを挑まれ、敗れて追放されていく。

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ケイロン(英雄怪人)
ケンタウロスの一人であるが、一般のケンタウロスとは生まれが異なり、神クロノスの子どもとなる。聡明で文武両道に長け、アキレウスはじめ多くの英雄を育てる教育者となる。射手座の主(星座のギリシャ神話の章参照)。

ケクロプス(アテナイ王)
都市アテナイの伝承での、建国にかかわる初代の王。大地から生まれたとされ、そのため彼の下半身は蛇の姿をしている。女神アテネと神ポセイドンがアテネの都市の守護神争いをしたときの審判者でもあった。

ケル(死霊)
黒い悪霊の姿で描かれ、翼と長い歯と爪を持って死骸の血を吸うとされる。「死の運命」を意味し、ホメロスの『イリアス』では、主人公「アキレウス」と「ヘクトル」の死の運命をはかりにかける場面で、普通名詞として使われており、要するにそうした「死の運命の擬人神」(「闇にうごめく神々」の章参照)。

ケルベロス(地獄の番犬)
テュポンとエギドナの子で「ネメアの不死の獅子」「レルナのヒュドラ」などの兄弟となる。神話作家ヘシオドスの叙述では、50の頭であるが、一般には三つの頭を持ちその周りには無数に蛇の頭が生えていて、尻尾も蛇という姿で描かれる。地獄の番犬として「地獄のシンボル的存在」となっている。ヘラクレス物語でも有名。

ケンタウロス(怪人種族)
上半身が人間で下半身が馬という怪人。基本的に野卑な野人で乱暴者となっていて、テセウス伝説に登場する時には、テセウスの友人であったその地方の王の結婚式に招待されたのに酒を飲んで花嫁を襲い、乱闘を引き起こしている。ただ、種族が異なるケンタウロスに「ケイロン」(同項、および星座のギリシャ神話「射手座」の節参照)のような高潔で文武に長けている教育者などがいるおかげで、一般に評判が救われている。

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コドロス(アテナイ王)
伝説のアテナイ王の一人であるが、敵に攻められた時、その敵に神託があって「アテナイ王を殺さなければ勝利が得られる」と託宣があったことを聞きつけ、わざと敵に近づいて敵兵とけんかして自らを殺させたという。敵はこれを知って退いていった。その子「メドン」は、こんな立派な父の跡目を継ぐことはできないと言って王位を受けず、こうしてアテナイは王制が廃されたという。

ゴルゴン(妖怪)
三人姉妹の妖怪でその末の「メドゥサ」だけが死の運命を持っていたという。そのため「メドゥサ」はペルセウス(ペルセウスの伝説参照)に退治されてしまった。彼女たちは醜悪な顔を持ち、髪の毛は蛇で歯はイノシシのように牙がでており、大きな黄金の翼をもっているとされた。有名なのがその「眼」で、その眼をみた者は「石」になってしまうとされた。ペルセウスによって切り落とされたメドゥサの首は女神アテネの盾につけられている(「闇にうごめく神々」の章参照)。

コロニス(アポロンの愛人)
医神アスクレピオスの母として知られる。神アポロンに愛されて子を孕んだが、人間の男に心を移したためアポロンによって殺された。しかし、胎内にあった子は取り出され、ケンタウロスのケイロンに預けられて育てられたという。その子が後の「医術の神アスクレピオス」となる。このときコロニスの心変わりを告げた「鴉」は、それまで白い姿であったのにそれ以来黒くかえられてしまったという(「神々の恋」の章参照)。

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