3.ギリシャ神話、その主題と旋律 - 21. 星座のギリシャ神話、黄道12宮の星座物語 | 小澤 克彦 岐阜大学・名誉教授

ギリシャ神話、その主題と旋律
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INDEX
1. ギリシャ神話とは
2. ギリシャ神話の日本語資料
3. 宇宙ないし神々の生成の物語
4. クロノスの一族
5. プロメテウスの神話
6. オリュンポスの神々の物語
7. 神々の「恋」と「異性関係」
8. 闇の神々
9. 神話を彩る妖精たち
10. 英雄ペルセウス伝説
11. 豪傑ヘラクレス伝説
12. アルゴー船伝説
13. テセウス伝説と迷宮の神話
14. テバイを巡る三つの伝説
15. 英雄アムピアラオス伝説
16. トロイ戦争伝説の大筋
17. トロイ戦争の発端と前夜
18. トロイ戦争(ホメロスの『イリアス』全24巻の内容)
19. トロイの落城にまつわる諸伝承
20. トロイからの帰還物語
21. 星座のギリシャ神話、
黄道12宮の星座物語

21.

星座のギリシャ神話、黄道12宮の星座物語


 ギリシャ神話というと「星座物語」をイメージする人が多い、実際ギリシャ神話ということで星座の物語は大きなテーマとなるので、ここに紹介しておく、主人公たちは「神々」であったり「英雄」であったり「妖精」であったりしている。ここでは一般に「生まれ月」の星座、つまり黄道12宮の星座の物語を紹介しておく。

1、「牡羊座」3月21日〜4月19日
これはギリシャの代表的な英雄物語である「アルゴー船の物語」に出てくる話となる(同項参照)。この「アルゴー船」というのははるか東方の黒海の奥にあったコルキスという国に「黄金の羊の毛」を求めていく船の名前で、これは、国を乗っ取られてしまった若い王子イアソンが、「黄金の羊」の毛を持ち帰ったら国を返してやるという言葉に、ギリシャを代表する英雄達に声をかけて結成した冒険の一行であった。これには後で触れる「双子座」の兄弟カストルとポリュデイケス、「かに座」や「獅子座」に関係するヘラクレス、また「琴座」の音楽の英雄オルペウスなどなどの名高い英雄達がたくさん参加していた。
 イアソンも女神ヘラに試されて、以降ヘラの庇護を受けていくことになる。こうして彼等は数々の冒険を乗り越えてコルキスへと到着、土地の王の娘で情熱の王女メデイアの愛を得て、彼女の献身と優れた術のおかげでついに「黄金の羊の毛」を持ち帰るのに成功する。その
「黄金の羊」が天に飾られ「牡羊座」となっている。
 したがってこの星座を見たとき人々は、その「アルゴー船の英雄達の冒険」を思い出し、この星座の生まれの人なら自分を「冒険の英雄」の一人に数え、またそれが女性であったら「情熱の王女メデイア」と自分を重ね合わせることもできる。

2、「牡牛座」 4月20日〜5月20日
 この星座は「神ゼウス」の姿となる。ゼウスというのはギリシャの神々、通常オリュンポスの神々と呼ばれている神々の中の最高の神「主神」なので、この星座は非常に立派で、この星座の中には日本名で「すばる」と呼ばれる星の一団があることでも知られている。
 なぜゼウスが「牛」の姿をしているのかというと、これはゼウスが現在の中東地方(ギリシャ人はこの地方をアシアと呼んでいた。アジアの語源)の
王女エウロペに恋をして、自分の妻である女神ヘラの目をごまかすために「牛」の姿に変身して近づき、エウロペがつい油断をしてその背中に乗ってしまった時、突然起きあがって彼女を乗せたまま海を渡り、ギリシャ本土の南にある島クレタ島へとやってきて彼女から子どもを生んだという。その時の立派な牛の姿が天に記念として置かれたというわけである。
 また、この時以来中東の海岸線から西は「エウロペの地」つまり「ヨーロッパ」と呼ばれることになった。そしてそのエウロペが生んだ子どもが伝説のクレタ王ミノスと、死後冥界でミノスと共に裁判官となるラダマンテュスであった。
 そういうわけで、この星座をみた時、この星座の男性は自分を「神ゼウス」と重ね合わせ、女性であったらヨーロッパの名前の由来となり、伝説の王、冥界の裁判官の母となる美しい王女エウロペの姿を自分の中に見いだすことができる。

3、「双子座」 5月21日〜6月21日
 この星座は先に「牡羊座」を見た時触れた「双子の兄弟」カストルとポリュデイケスの姿となる。彼等は「レダ」という女性を母にもっているのだが、このレダはすでに人妻であった。彼女はとても美しく、ゼウスが彼女を見初めて「白鳥」の姿に身を変えて彼女に近づき、白鳥と思って油断していた彼女を白鳥の姿のまま犯してしまう。
 その時のゼウスの姿が
「白鳥座」と言われる。方、彼女が月満ちて生んだのは「卵」であったが、ところが、同じ日に彼女は夫とも床を共にしていたために、卵からかえった子どもは、一人は神の血を引き「不死」でもう一方は人間の血を引き「死すべき」運命にあることになった。
 ついでに言うと「卵は二つ」でもう一つからは女の双子がうまれ、こちらも神話・伝説において主要人物となる。その女の姉妹とは、「絶世の美女」であり彼女をめぐってギリシャとトロイが「その奪い合いの戦争」をおこしたことで知られる「絶世の美女ヘレネ」と、そのギリシャ方の総大将の妻であり、娘を理不尽に夫によって犠牲にされたことを恨み夫の帰りを待ってたった一人で復讐の刃を夫に浴びせていく「烈女クリュタイメストラ」であった。
 さて、肝心の男兄弟だが、どちらが神の子でどちらが人間の子なのか問題になり神話は錯綜する。しかし結局、後にポリュデイケスが神の子、カストルが人間の子とされる。そして二人は共に英雄として活躍するのだが、カストルがある戦いで戦死してしまうことになり、ポリュデイケスの方は天に戻されるということになる。こうなると二人は別々になってしまうわけで、この時ポリュデイケスはカストルが死んで冥界にいってしまうのなら自分は天にもどって不死の生活になるのは嫌だと言い張り、結局一つの命を一日交替で使うことにしたという。こうして
二人とも結局神に昇華することになり天にあって星と輝いたとなる。
 理屈として彼等が星になるいわれはまた別にあって、彼等はあの「アルゴー船」にあって航海を無事に導くのに活躍し、「航海の護り手」にもなっていた。星は古代にあっては航路の導きであるから、彼等が星になったとして不思議はない。
 一方、ここからまたローマでは彼等は都市の護り手ともなっていき、今日でもその遺構がローマに見られる。
 そういうわけでこの星座の人はこの星座を見た時、一般には自分を「兄弟愛」の人と思うことになるのだろうが、あるいは「航海の守護神」「都市の守護神」を見たりすることもでき、女性であれば「絶世の美女ヘレネ」と自分を重ねることもできるかもしれず、あるいは人として女として自己を貫き修羅の人生といえども引き受けていく強く雄々しい女性クリュタイメストラを見ることもできるかもしれない。

4、「かに座」 6月22日〜7月22日
 これはヘラクレスの物語と関係する(ヘラクレスの伝説参照)。例によって神ゼウスはアルクメネという女性に恋してしまう。しかし彼女は人妻であった。そこでゼウスがとった手段というのは、出征中の彼女の夫に身を変えて彼女のもとにやってくるというかなり卑怯な手であった。しかもゼウスは彼女をひどく気にいったのか通常の夜の時間を三倍に引き延ばして彼女を抱いていたという。ところが夫の方も翌日戻ってきて、しばらくぶりということで妻をベッドに誘うが、彼女はもうたくさんといってくる。びっくりした夫は事情をきくが、昨晩もうあんなにたくさん、という返事に二度びっくりで、有名な占い師に占ってもらった所「ゼウスの仕業」と知れた。ゼウスでは仕方ないとおもったのか、彼は妻の昨晩のことは不問にして、今晩はということで彼女と床を共にする。こうして彼女は「二人の子ども」を生んでくる。その一人がゼウスの血を引くヘラクレスというわけで「一日早く生まれた」とされている。ゼウスの妻ヘラはこれを察知し、ヘラクレスに「呪い」をかけてしまう。そしてヘラクレスは様々の恐ろしい難行をしていかなければならないことになってしまう。
 その難行が通常「12の難行」と言われているとなる。そのうちの一番目が次ぎに見る「不死身の獅子退治」となるが、この
「かに座」は二番目の「ヒュドラ(水蛇)」退治に関係する。このヒュドラというのはレルナというところに巣くっていた巨大な水蛇で強烈な毒を持ち、九つの頭を持ちそれは切り落とされてもつぎから次ぎへと新しく生えてくるというとんでもない奴であった。こうしてヘラクレスは苦戦し、甥っ子のイオラオスに助けをもとめるが、一方のヒュドラの方も助っ人が現れる。それが近所にいた「大かに」だった。かにはヘラクレスに挑み、足を挟んでヒュドラを助けようとするが、ヘラクレスに踏みつぶされてしまう。
 ヘラクレスの物語はこまでだが、この星座に「かに」をみた人々は、あれはあのヘラクレスに踏みつぶされた「大かに」に違いないと思い、だとすると女神ヘラに「その友情」を讃えられて天に飾られたのだろうとしていったと思われる。
 ともあれ、こうしてこの「かに座」を見たとき、この星座の人は自分を「友情の人」と考え、さらに「友情厚き人になろう」と思ったことであろう。

5、「獅子座」 7月23日〜8月22日
 この星座は今のヘラクレスの「12の難行」の一番目になる「ネメアの不死身の獅子退治」に関係する。この獅子は不死身なため、槍・刀では退治できないような凄まじい怪物であった。そんな怪物がネメアに出没しているとしてヘラクレスはその退治を命じられた。ヘラクレスはネメアにやってきてこの獅子を探し出し棍棒をもって戦い、ヘラクレスは首を締め上げて窒息させ、しかもその皮をはぎ取ってしまったという。そして彼は終生その皮を身につけ、棍棒を持つという姿で通すことになる。
 そしてこの星座に「獅子」をみた人々は、あんなに立派な獅子だとするとあの「ネメアの獅子」しか考えられないとして、そこにこの「ネメアの獅子」を同定していったと考えられる。
 この星座を見た時、この星座の人は男女を問わず「立派な姿と強さ雄々しさ」を自分の中にみたことであろう。ギリシャでは獅子は「王者」のシンボルであったから。

6、「乙女座」 8月23日〜9月22日
 この星座の本体として「女神デメテル説」と「女神アストライア説」とがある。しかし「乙女」という名前からは「アストライア」説の方が適切である。というのも「アストライア」というのは「星」を表すギリシャ語「アストロ」を変化させて女性形にしたものなので日本語的には「星乙女」となるからである。
 「女神デメテル」は「大地の母」だから「乙女」とはならない。これは、ギリシャに先立って星座を確定していたメソポタミアでの見方が「農耕」に関わって、この星座に属する一等星(スピカ)を「麦の穂」としていたところから後世になってそれに合わせたものと考えられる。つまり、麦の穂をもっているのだとしたら「農耕の女神、大地の母デメテル」ということになってくるからである。現在でもそうした説明をしている紹介本も多いが、ここでは「星乙女」という意味になるギリシャ語本来の意味から「女神アストライア」で説明する。
 女神アストライアは別の名を
「ディケ」といい「正義の女神」であった。彼女は人間世界に正義が行き渡ることを期待して人間世界にいたのだが、人間は堕落していく。人間は、当初は「黄金の種族」と呼ばれていたのだが、その次ぎの代には「銀の種族」となり、さらに「青銅の時代」となり、ついには「鉄の時代」となってあらゆる悪事が横行するようになり、ついに女神アストライアも愛想を尽かして天に戻ってしまったという。しかし彼女は今でも「星になって」人間世界を見下ろして、人間が正義の女神を呼び戻すようになるのを待っている、というわけである。
 この物語は、ギリシャの古い詩人ヘシオドスの「人間の五つの時代の物語」をほとんどそのままモチーフにしてローマ時代に作られた話だが、「正義が失われている」という感じはいつの時代にもあったようである。
 この星座をみて人々は「正義の女神の嘆き」を思い、この星座に属する人は「自分は正義の女神に仕える人」として正義を取り戻すのに働いて欲しいという願いがもてる。

7、「天秤座」 9月23日〜10月23日
 これは今見た「乙女座」が「正義の女神アストライア」であることに関係しており、これは彼女が持っている「正義のはかり」となる。学問的には、天文学的に昼夜を等しく分ける「秋分点」がこの星座にあったことからその釣り合いを天秤であらわしたのだろうと考えられているが(ただし、現在秋分点は「乙女座」に移っている)、そんな説明よりも「女神アストライアのもっている正義のはかり」でいい。アストライアが正義を司る女神であるとすると、ここには「正義そのもの」がなければならないからである。この星座に属する人はやはり「正義」を強く思うことであろう。

8、「さそり座」 10月24日〜11月22日
 サソリというと砂漠の虫のイメージで、ギリシャの本土にはいなかったようにも思えるが、このサソリはギリシャのいろいろな文献にでてくる。そもそも「さそり」を表す英語の「スコーピオン」はもともとギリシャ語「スコルピオス」の英語読みとなる。
 その「さそり座」の物語だが、これは一般に
「オリオン座」と関係しているとされる。この「オリオン」はギリシャ神話の中にでてくる「巨人の猟師」であった。最古の文献の「ホメロス」の叙事詩にも描かれ、そこですでに「オリオン座」となっている。このオリオンは巨人で絶世の美男子であり、その美しさが全天の中でももっとも美しい星座とも言われるオリオンに重ねあわされたと考えられる。
 ただ、このオリオンと「さそり」との関わりについては、伝承は錯綜している。というか、両者が関係づけられて星となる話はない。つまり、オリオンが猟師としての腕を自慢し傲慢になった罰として大地の神に差し向けられたサソリに刺されて死んだという、通常紹介される話しはかなり後世になった作られた話らしく、ギリシャ時代のものではない。
 ギリシャ神話では、「オリオンはサソリに刺される」という形にされる話しも「オリオンが主人である女神アルテミスの母をかばって身代わりになって刺された」などとなってしまう。第一、「サソリ」はオリオンの傲慢を罰したという話では、サソリが星座となっていてもいいけれど、一方のオリオンがどうして同じように天に昇って星になっているのかが説明できない。
 これは「おとぎ話」のようなものとして細部にはこだわらないこととして、ともかくこの星座を見たとき人々は、
「さそりは小さいながら巨人をも倒す」というその「小さいものでも侮れない」という教訓を見たと言えるかも知れない。

9、「射手座」 11月23日〜12月21日
 この星座は「上半身が人間で下半身が馬」というケンタウロスの一族の賢人「ケイロン」の姿であるとされる。彼も神話中に名高く、すでに最古の叙事詩であるホメロスの物語の中でも讃えられている。彼の特質は「賢人で教育者、音楽、医術、予言、武芸百般に通じている」とされる。従って彼の育てた連中というのがすごい連中ばかりで、先に「牡羊座」で触れた「アルゴー船の英雄イアソン」、「双子座」のカストルとポリュデイケス、「蛇つかい座」となる医神アスクレピオス、また「トロイ戦争伝説」の主人公でギリシャ最大の英雄と謳われるアキレウスなどそうそうたるものとなる。
 ケイロンが星になった由来だが、これには「かに座」や「獅子座」でみたあのヘラクレスが一枚咬んでいる。ヘラクレスはギリシャ最大の豪傑であり艱難辛苦をものともしない剛勇の男ではあったが、実はひどいトラブル・メーカーでもあった。ある時、ケンタウロスの一族を訪ねた時、その秘蔵されていた酒を無理矢理奪って飲んでしまい、駆けつけたケンタウロス達と喧嘩になってしまう。そして逃げるケンタウロス達を追いかけ、もっていた弓矢で矢を射かけてしまう。ところがそれが事もあろうに高潔な賢人ケイロンの腕に刺さってしまった。ところがその矢にはどんな薬でも直せない猛毒が塗ってあったのでさしものケイロンも苦しみ喘ぐことになってしまい、しかもケイロンは不死であったので永遠に苦しまなければならないことになってしまう。それを神プロメテウスが助けて死ねるようにしてくれたのだが、ここでケイロンはこれまでの業績によって天に上げられ星になったというわけである。
 この星座を見るとき人々はあの「幾多の英雄を育てた賢者にして教育者」を思うわけで、この星座の人はやはり自分もそうした「最高の教育者」の一族と思うのかもしれない。

10、「山羊座」 12月22日〜1月19日
 この星座については、一般には山羊の姿をした「牧神パン」の話しが紹介されることがほとんどだが、それは先にあったメソポタミアの星座の形が「上半身は山羊で下半身が魚」になっているので、それをギリシャ神話の登場人物で説明した時の話となる。
 パンというのは「下半身が山羊で上半身は人間ではあるものの頭には山羊の角が生えている」という神で、古代ギリシャではなかなか大事な神の一人となる。このパンが星になる話しにもいろいろ話があり、ギリシャの神々が巨人族と戦いになったとき、このパンは常に主神ゼウスの傍らにあって彼を助け、ある時敵のホラ貝を発見してそれを取り上げ、力一杯それを吹いて味方を鼓舞して勝利を呼び込み、その功績により天にあって輝く星にされたというものがある。この時パンはホラ貝を「海」で発見したわけで、パンは下半身を魚のままに星になったというわけである。これはメソポタミアでの星座の形に物語りを合わせている。
 そのほかには、ゼウスが幼少の時、彼を育ててくれたクレタ島の妖精アマルティアがゼウスに与えていた「山羊の乳」を記念として、その山羊を天に飾ったというのもある。
 ところが一般の星座の本によると、ギリシャの神々がナイル河にピクニックに行ったとき、突然怪物が現れたのでみんなそれぞれ変身して逃げ出したのに、パンはあわてていたので魚に化けるつもりが半分本体の山羊のままでナイル河に飛び込んでしまった、という話しが紹介されている。しかし、この話しは肝心の古代ギリシャの神話にはなく、何時どうして作られたのかわからない。
 人々がこの星座を見た時、戦いにあって主神ゼウスを助け「味方を鼓舞している勇者パン」をみるか、ゼウスを育ててくれた山羊ないし「養育者の妖精アマルティア」をみるか、「あわてもののパン」をみるかで感じも違ってくる。

11、「水瓶座」 1月20日〜2月18日
 この星座の物語は再び「ゼウス」に戻る。主人公は小アジアのトロイにあった「ガニュメデス」という少年だが、これはすでに最古の叙事詩「ホメロス」に歌われ、そこでは「・・・神にも見まごうガニュメデスが生まれた。ガニュメデスは人間の中で第一の美少年となり、さればこそ神々はその美貌を愛でて、彼を神々と共に住まわせようとした」とある。こうして彼は天に連れて行かれたというわけで、この時「ゼウスみずから、ないし鷲の姿となって」とも言われ、鷲説では「鷲座」がその時の姿だとされる。そして彼は神々のパーティーの時、お酌をして回わる役を仰せつかっていると言われる。もっともこの「水瓶座」は、少年が水瓶から水を流している図柄になるので、神々のお酒をこぼしてしまったということになりそうである。
 いずれにせよこの星座の人は「美少年」に縁があり、男性なら美少年になり、女性ならそうした美少年を手にいれる女性ということになるのかもしれない。

12、「うお座」 2月19日〜3月20日
 これは先の「山羊座」の「ナイル川に飛び込んだ牧神パン」と同じタイプの物語となる。それによると、やはり怪物の出現に神々がそれぞれ逃げだした時、美の女神アフロディテも息子の愛の神エロスと共に逃げ出し、川辺の芦の間に隠れる。ところが風で芦が激しくゆれたので、怪物の接近と思って怖れた女神アフロディテは河に飛び込み「河の妖精」に助けを求める。そこに、多分声を聞きつけた妖精なのであろう「二匹の魚」がやってきて女神達を安全なところにかくまったという。後に騒ぎが収まった時、女神アフロディテはこの時の恩を忘れず、この二匹の魚を天に上げ星にして飾ったとされる。そこで「並んで輝く星座となったお前達は、背中にお二方の神を背負った」と歌われるようになったといわれる。
 この星座の人は「美と愛の神」の二人の神の庇護の下にいるわけで、「美と愛」に恵まれることになるのかも知れない。

その他の有名星座
「おおぐま座」
 これは「北斗七星」が含まれている星座でもっとも有名な星座の一つで、物語の方も良く知られた話しになっている。
 これも「ゼウスの女狂い」の物語の一つとなるが、女神アルテミスの従者であった
森の妖精カリストがやはりゼウスに見初められて襲われ子どもをはらんでしまう。いつも泉で水浴びする彼女たちだったので、ついにある時その事実が見つかってしまい、アルテミス(あるいは一説ではゼウスの妻ヘラ)によって熊にされてしまったという。
 しかし子どもの方は人間として成長しており、長じて森に狩りにやってきたときカリストはそれを見つけ、我が子の成長した姿に思わず駆け寄っていこうとする。ところが子どもの方からすると一匹の熊がこちらに向かって駆けてくるというわけで、襲われると見た彼は熊に立ち向かっていこうとする。これを天から見つけたゼウスは、自分のやったことが「母殺し」を引き起こしそうだということで慌てて熊となっていたカリストとその子とを天に引き上げともに星座にしたというわけである。これが「大熊座」と「小熊座」の言われとなる。しかしこれに嫉妬した妻のヘラは、そのカリストたちが海に沈んで休むということをできなくしてしまい、そのため彼女はいつまでも空にいなければならなくされたという。この星座に美しい森の妖精カリストの姿を思う時、非常に切なく可哀相な話しとなる。


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