3.ギリシャ神話、その主題と旋律 - 16. トロイ戦争伝説の大筋 | 小澤 克彦 岐阜大学・名誉教授

ギリシャ神話、その主題と旋律
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INDEX
1. ギリシャ神話とは
2. ギリシャ神話の日本語資料
3. 宇宙ないし神々の生成の物語
4. クロノスの一族
5. プロメテウスの神話
6. オリュンポスの神々の物語
7. 神々の「恋」と「異性関係」
8. 闇の神々
9. 神話を彩る妖精たち
10. 英雄ペルセウス伝説
11. 豪傑ヘラクレス伝説
12. アルゴー船伝説
13. テセウス伝説と迷宮の神話
14. テバイを巡る三つの伝説
15. 英雄アムピアラオス伝説
16. トロイ戦争伝説の大筋
17. トロイ戦争の発端と前夜
18. トロイ戦争(ホメロスの『イリアス』全24巻の内容)
19. トロイの落城にまつわる諸伝承
20. トロイからの帰還物語
21. 星座のギリシャ神話、
黄道12宮の星座物語

16.

トロイ戦争伝説の大筋

「詳しくは17〜20までのページを参照」


 トロイ戦争は、テバイを破ってアルゴス(ミケーネ)を中心に確立された勢力としての「ミケーネ人」による小アジアのトロイ攻めの物語となる。従って時代設定はかなり遅れて、テバイ戦争の後の話ということになってくる。ミケーネ時代にはまだ台頭してきていないアテナイは大きな扱いを受けてはいない時代となる。
 ホメロスの叙事詩『イリアス』に先立つ物語(叙事詩とした存在したが消滅。さまざまの引用や梗概を紹介しているアポロドロスの『ギリシャ神話』などから復元)があり、それは神々の世界を舞台としている。従って「トロイ戦争伝説」も半分神々の物語、半分英雄の物語といったものになっている。

トロイ戦争の発端となる物語
1. 女神テティスの定め。その子供は父を超える。
2. テティス、人間の英雄ペレウスの妻となる。(その子が『イリアス』の主人公アキレウス)
3. 結婚式に招かれなかった争いの女神エリス、式場へ黄金のリンゴを投げ入れる。
4. リンゴのメッセージは「最も美しい女神へ」であった。ヘラ、アテネ、アフロディテの三美神の争いとなる。
5. パリス審判に選ばれる(トロイの王子。生誕時の不吉により、山中に捨てられたが助けられていた)。
6. 三美神、贈物の約束。ヘラは世界の王者を、アテネはあらゆる戦いでの勝利を、アフロディテは世界一の美女をそれぞれ勝利のお礼に約束する。
7. パリス、世界一の美女にひかれて、アフロディテを選ぶ。
8. パリス、美女ヘレネを求めてスバルタのメネラオスのもとへ行く。
9. メネラオスがクレタ島へ出掛けた留守に、パリス、ヘレネを連れて出奔
10. メネラオス、ヘレネ奪回へ。兄のミケーネ王アガメムノンに相談。
11. メネラオスとイタカの王智将オデュッセウスが戦争を避けるためヘレネ返還を求めてトロイへ行く。
12. 二人は、メネラオスの旧友であるトロイの長老アンテノルその他心ある人々の協力を得るが、パリスはきく耳をもたない。
13. ギリシャ軍、遂にトロイへ進軍決定。
14. ギリシャ軍、アウリスへ結集。アガメムノンの娘イピゲネイアが犠牲にされる。
15. ギリシャ軍の有力将軍達。大将アガメムノン、スパルタ王メネラオス、テッサリア地方プティアの王アキレウス、イタカのオデュッセウス(『オデュッセイア』の主人公)、サラミスのアイアス、アルゴスのディオメデス、クレタのイドメネウス、ピュロスの老将ネストルなど
16. 進軍中ピロクテテスの事件発生。
17. ギリシァ軍、トロイへ。上陸戦でギリシァの勇将プロテシラオス一番乗りするも討死に。トロイの猛将キュクノス、アキレウスに倒されトロイ方城中に退く。
18. 九年間の戦い。
19. 十年目。ホメロスの叙事詩『イリアス』はここから始まる。

『イリアス』の概略
1. ギリシャ勢にアポロンの疫病の矢が降り注ぐ。その原因はアポロンの神官の娘クリュセイスがギリシャ方に捕らえられたことにあった。
2. クリュセイスの返還を巡ってアガメムノンとアキレウスの争いとなり、アキレウス憤激し陣を引く
3. 当事者であるパリスとメネラオス、一騎打ちですべての決着をつける事に同意。しかし負けそうになったパリスは城内へ逃げ出してしまう。
4. トロイ方の一人、誓いを破ってメネラオスに矢を射かけ再び戦乱となる。
5. ギリシァの猛将ディオメデスの活躍とトロイの英雄アイネイアスの抵抗
6. トロイの総大将ヘクトルとその妻アンドロマケの情愛
7. トロイの英雄ヘクトルの鬼神のごとき活躍にギリシャ勢総崩れとなる。
8. 敗色濃いギリシャ勢を立て直さんと、戦陣を引いていたアキレウスの親友パトロクロス、アキレウスの鎧を借りて参戦
9. パトロクロス奮戦しギリシャ方を立て直すも深傷を追い、ついにヘクトルに討たれる
10. アキレウスの嘆きと後悔。アキレウス、パトロクロスのかたきを討つ事を決意。
11. 母テティスの慰めと忠告。ヘクトルを倒せばアキレウスも死なねばならぬ運命の事。
12. アキレウスそれは十分知ってのうえでの決意である事。
13. 悲しみのうちにやむなくテティス、武具を鍛冶の神ヘパイストスに頼みに行く。
14. アキレウスとヘクトルの長時間にわたる一騎打ち。
15. ヘクトル討たれ、トロイ方城に籠る。
16. トロイの老王プリアモス、息子ヘクトルの死骸を乞うて密かにアキレウスを訪ねる。
17. 老王の願いにアキレウスの心も動き、ヘクトルの死骸はトロイに返される。
叙事詩『イリアス』はここで終わる。

その後の顛末の物語(アポロドロスによる梗概で復元)。
1. アマゾンの女軍トロイへ援軍として到着し、女王ペンテシレイア活躍するも、アキレウスに討たれる。
2. アキレウスのペンテシレイアへの慕情と後悔。
3. パリスの射た矢、アキレウスの急所(かかと)に当たってしまい、不死身を誇ったアキレウス遂に倒れる。
4. アキレウスの死体を守ってアイアスとオデュッセウス奮戦
5. 回収してきたアキレウスの武具オデュッセウスに与えられる。不当な評価にアイアス発狂する。
6. トロイの占い者ヘレノス、パリスに愛想をつかして出奔する。オデュッセウス、ヘレノスからトロイの秘密を聞き出す。
7. トロイ落城の三条件。アテネ像パラディオンの奪取、アキレウスの子の参戦、ヘラクレスの弓。
8. オデュッセウス三条件を揃えるため活動する。パラディオンを盗み出す。アキレウスの子ネオプトレモスも呼び寄せられ参戦。ピロクテテス復帰しヘラクレスの弓も揃う。
9. 城中にこもったトロイ方はなかなか落ちない。オデュッセウス、木馬の計を案出。
10. トロイの神官ラオコンの悲劇。木馬の計を見抜くも女神アテネに差し向けられた大蛇に襲われ殺される。
11. 城内の木馬から夜中ギリシャ方の勇士踊り出て城門を開き、退却したと見せ掛けていたギリシァ軍城内に乱入。
12. ギリシァ軍の乱暴と殺戮。和平に尽くしていた長老アンテノル一族以外はすべて殺され女は奴隷に。
13. アイネイアスの家族のみ脱出に成功。イタリアに逃れ後ローマ建国の祖となる。
14. ギリシァ諸将のその後。無事帰国した者はピュロスの老将ネストル、ディオメデスなどわずか。難船し溺れ死んだ者や、メネラオスのようにエジプトまで流されようやく帰国したものなどもいる。
15. オデュッセウスも難船し十年もの漂流を余儀なくされる。(その物語が『オデュッセイア』で歌われる)

『オデュッセイア』の概略
1. トラキアのキコネス人との戦い。
2. ロートス常食人の国。その実を食べると帰郷の意志を失う。
3. 一つ目の巨人キュクロプスの国。ポリュペモスとの戦い。ポセイドンに呪われ長い苦難をしいられることとなる。
4. 風の番人アイオロスの島で歓待される。風を封じてもらったが部下がその袋を開いてしまい再び漂流。
5. 夜のない国、ライストリュゴネス人の国。ここで遂に自船以外のすべての部下を失う。
6. 人をブタにかえてしまう魔女キルケの島。彼女の魔法をやぶり一年間彼女と同棲。
7. 死霊の神託所へ行く。死んだ母やアキレウス、またこの頃殺されていたアガメムノンの亡霊に会う。そこで予言者テイレシアスの予言を受ける。
8. 再びキルケの所に戻り、帰りの航路や危険からの脱出方法を教わり船出する。
9. 美しい歌声で人を魅了し引き付け血をすうセイレンの島の傍らを通る。
10. 怪物カリュブデスとスキュレの住む海峡を通る。
11. 太陽神ヘリオスの島トリナキエに立ち寄る。部下がその牛を食べてしまったため呪われ部下全員死ぬ。
12. オデュッセウスただ一人漂流し、女神カリプュソの島に辿り着く。七年間彼女と同棲する。
13. カリュプソの島での永遠の若さと豊さをすてて再び筏をくみ海へ。
14. 海の神ポセイドンに憎まれていたため筏を砕かれ泳いで漂流。
15. パイアケス人の島へ泳ぎ着く。気品ある王女ナウシカと遭遇。
16. アルキノオス王の歓待とナウシカとの交情。
17. アルキノオスのおかげでオデュッセウス遂に故郷イタカに帰り着く。
18. 一方、息子のテレマコス父の安否を訪ねて旅する。
19. ピュロスにネストルを訪ね歓待される。
20. さらにスパルタにメネラオスを訪ねる。
21. イタカに戻り、父オデュッセウスと再会する。
22. 二人力をあわせ、留守を荒らし、妻ペネロペイアを狙う邪な貴族達を退治する。

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