3.ギリシャ神話、その主題と旋律 - 12. アルゴー船伝説 | 小澤 克彦 岐阜大学・名誉教授

ギリシャ神話、その主題と旋律
HOME
INDEX
1. ギリシャ神話とは
2. ギリシャ神話の日本語資料
3. 宇宙ないし神々の生成の物語
4. クロノスの一族
5. プロメテウスの神話
6. オリュンポスの神々の物語
7. 神々の「恋」と「異性関係」
8. 闇の神々
9. 神話を彩る妖精たち
10. 英雄ペルセウス伝説
11. 豪傑ヘラクレス伝説
12. アルゴー船伝説
13. テセウス伝説と迷宮の神話
14. テバイを巡る三つの伝説
15. 英雄アムピアラオス伝説
16. トロイ戦争伝説の大筋
17. トロイ戦争の発端と前夜
18. トロイ戦争(ホメロスの『イリアス』全24巻の内容)
19. トロイの落城にまつわる諸伝承
20. トロイからの帰還物語
21. 星座のギリシャ神話、
黄道12宮の星座物語

12.

アルゴー船伝説(アルゴナウティカ)

「黄金の羊の毛を求める海洋冒険物語、イアソンとメデイア」


 「アルゴー船物語」にもヘラクレスは主要な乗組員として登場する。したがって時代設定としては同時代ということになる。この物語は、全体的には「黄金の羊の毛」を求めて、ギリシャから黒海の奧にあるコルキス(現在のグルジア)まで、50人の英雄が旅していく非常に長い物語となる「海洋冒険物語」であり、後のホメロスによる叙事詩『オデュッセイア』はこの物語を下敷きとしていて、同じ話が少し設定を変えて頻繁にでてくる。

1. 主人公となるイアソンは、イオルコスの王の息子であったが、王国はあくどい叔父のペリアスに乗っ取られていた。
2. イアソンは成長して王国の奪回をはかるが、ペリアスに「黄金の羊の毛」の奪取を条件に出される。
3. イアソンは、黄金の羊の毛をコルキスに持っていったプリクソスの息子であったアルゴスに助けを求めて招いた。
4. アルゴスは女神アテネの進言によって五十の櫂を持つ船を建造し。女神アテネはその船首に(ゼウスの神託所である)ドドネの人語を話す樫の木の材質を付けた。この船は建造者の名前をとって「アルゴー」と呼ばれた。
5. そして神託を乞うたところ、ギリシャのもっとも優れた者達を集めて出航するようにとあった。集まって来た者達の中でとりわけ有名な者には以下の英雄がいる。
ヘラクレス ギリシャ最大の英雄豪傑として数々の冒険物語がある。
オルペウス 有名な音楽の名手として一般にもよく知られた伝説を持つ。
カストル 有名な「双子座」となる英雄で乗馬の名手。
ポリュデイケス 後にカストル共々「双子座」となる英雄で、ボクシングの達人。
カライスとゼテス 北風ボレアスの息子達で足のくるぶしのところに翼を持つ。
6. イアソンを隊長として出航して「レムノス島」に寄港した。アルゴー船の乗組員はレムノス島の女達と交わり、イアソンはヒュプシピュレと交わって二人の息子をもうけた。
7. 「キュジコス王」が支配するドリオニアに立ち寄り歓待された。夜になって出航したところ逆風にあって再びドリオニアに戻され、敵襲と思われて戦闘になり、キュジコス王は殺される。夜が明けてこの事実を知ったアルゴー船の英雄は嘆いて髪の毛を切り(大きな嘆きを表す風習)、キュジコスを立派に弔った。
8. その後彼等は「ミュシア」に立ち寄ったが、ここで誤ってヘラクレスとポリュペモスとを置き去りにしてしまうということがおきた。
9. 「ベブリュクス人」の地に来る。そこの王はアミュコスといい、この地に立ち寄る男に強いて「拳闘」を行い殴り殺していた。その王の挑戦を受けてポリュデイケスが受けて立ち、逆に王を撃ち倒す。
10. トラキアのサルミュデソスに行く。ここに盲目の予言者ピネウスがいたが、怪鳥ハルプゥイアイに悩まされていた。
11. 北風の神ボレアスの息子達であるゼテスとカライスがこれを追って倒した。
12. ピネウスはアルゴーの一行にこれからの道を教え、大岩が漂ってぶつかり合い船の航行ができない海峡について教示した。ここは深い霧がかかっており鳥でも抜けられないとされていた。ピネウスはここで一羽の鳩を放ち、もしその鳩が無事通り抜けたならそこに船を入れてよいが駄目だったらあきらめろと教えた。
13. 鳩を放ったところ、鳩はしっぽの毛を挟まれたけれど何とか通り抜けた。そこで一行も岩が離れたのを見て取って急ぎ船をこいで突進していった。女神ヘラの助けもあってアルゴー船は通り抜けることができたけれど船尾を挟まれて切り取られてしまった。それ以来、定めによってこの岩は動かなくなった。
14. マリアンデュノイ人のところにきたが、そこで予言者イドモンが猪に襲われて死に、名航海士ティピュスもいなくなってしまった。
15. コルキスの地にたどり着き、イアソンはそこの王アイエテスに「黄金の羊の毛」を譲ってくれるよう頼む。
16. 王は、凶暴な青銅の足を持ち口から火を噴く牡牛を一人でくびきにつないで畑を耕し、そこにテバイ建国の英雄カドモスが退治した龍の歯の残りがあるのでそれを蒔くように命じた。それは、この龍の歯からは凶暴な戦士たちがうまれてくるからで、それと戦う必要が出てくるからであった。
17. 王の娘であったメデイアが彼に恋をした。彼女は魔法が使えた。メデイアはイアソンに自分を妻とするなら助けようと約束した。
18. イアソンが承諾すると、メデイアは刀によっても火によっても害されない薬を渡してそれを身体に塗るように教えた。イアソンはこうして火を噴いて向かってくる牡牛をくびきにつなぐことができ、龍の歯を蒔くと凶暴な戦士が生えてきた。イアソンはメデイアに教えられていたように彼等の間に隠れて石を投げつけると彼等は互いに争い始め、その隙にイアソンは彼等を倒していった。
19. アイエテスは約束を守らず、アルゴー船に火をつけ一行を皆殺しにしようとした。
20. それを知ったメデイアは、イアソンを「黄金の羊の毛」のある「アレスの神域」に連れていき番をしている龍を薬で眠らせてそれを奪い、アルゴーの一行と夜の間に出航していった。
21. この時メデイアの弟が彼女についてきていた。アイエテスはアルゴー船の出航に気付いて船で追いかけてきたのでメデイアは弟を八つ裂きにして海に投げた。アイエテスがそれを拾って集めているうちにアルゴー船は遠くまで逃れていった。
22. アルゴー船の方はメデイアの弟殺しを怒ったゼウスによって嵐に遭った。
23. アルゴー船は人語を発して、キルケ(ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』の登場人物として有名な魔女。このキルケとメデイアは「叔母・姪」の関係とされている)によってメデイアの弟殺しの罪を浄めてもらわなければゼウスの呪いは解けない、と言ってきたので、キルケのところにやってきてメデイアを浄めてもらった。
24. セイレン(これもホメロスの『オデュッセイア』に登場して有名で、「上半身は女性、下半身は鳥」の妖精ないし妖怪。その音楽をきいたものは立ち去ることができなくなる)の傍らを通る。「音楽の英雄オルペウス」が対抗して歌を歌い、乗組員を船にとどめたが、一人だけセイレンに負けてそちらに向かって泳いで行ってしまった。
25. カリュブデスとスキュラと浮き岩の海峡のところにでる。(ここも『オデュッセイア』でよく知られているところ)
26. 太陽神ヘリオスの島の傍らを通り、パイアケス人の島にくる。ここの王アルキノオスに歓待される(『オデュッセイア』では、オデュッセウスが最後にたどり着いた島でそこで「王女ナウシカ」に会い、そしてアルキノオス王のおかげで帰還できた)。
27. アルゴー船を追っていたコルキスの追跡隊が偶然パイアケス人のところに来てアルゴー船を発見しアルキノオス王にメデイアの引き渡しを求める。
28. 王はメデイアがすでにイアソンと夫婦の契りをしているのならばそれはイアソンのものであるが、もしまだ処女のままだったら父の元に送り返そうと言った。アルキノオス王の后のアレテはイアソンとメデイアを一緒にしたのでコルキス人はメデイアをコルキスに連れ帰ることをあきらめこの地に住むことにした。
29. イアソンたちはメデイアと共に出航していったが、夜になって激しい嵐に遭遇したが近くに島を見つけてそこに避難した。
30. 「クレタ島」に近づいたがその地を守る「タロス」によって上陸を妨げられた。「タロス」というのは「青銅人」で、このタロスをメデイアが倒した。
31. アイギナにやってきて「水汲み」のことで争ったりした後、エウボイア島と本土の間を通ってイアルコスへと戻ってきた。全航海四ヶ月であった。
32. イアソンは「黄金の羊の毛」をペリアスに渡したが、王国を返すというペリアスの約束は果たされなかった。
33. イアソンは、アルゴー船をコリントスのはずれのイストモスに運んでポセイドンに捧げ、メデイアに復讐の方法を求めた。メデイアはペリアスの娘達に「若返り法」を教えると言って、だまして殺させてしまった。
34. ペリアスの息子は父を埋葬すると、これまたイアソンをイオルコスから追放した。
35. コリントスに亡命したところ、王クレオンはイアソンと自分の娘との結婚を申し出、イアソンはメデイアを離婚し王の娘と結婚することを承諾する。
36. 絶望と憤怒のメデイアは、新婦に毒を仕組んだ着物を贈って、新婦は父と共に烈火に包まれて死んだ。またメデイアは、イアソンとの間にできていた子ども達を殺し、太陽神ヘリオスから送られて来た馬車に乗ってアテナイへと逃れていった。
37. イアソンは失意のうちにアルゴー船の傍らで休んで居たとき、朽ちた船首が落ちてきて撃たれて死んだ。

▲ページのトップへ